コンピュータに立ちはだかる言語の壁
私ははじめてパソコンを前にしたとき、なんともいえぬ威圧感を感じた。私がパソコンを使い始めたときはまだ、ウィンドウズ3.xのときで、格好つけてマウスを使わず、DOSコマンドを見よう見まねで打っていた。これから必要なことだと思い、一生懸命練習した。だが、怪物を前にしたような威圧感はなかなか消えなかった。この歳でそんなことを言えば、単に歳だから、おじさんだから、と一蹴されるかもしれない。だが、当時はまだ、20代だった。それでは、威圧感を感じたのは単に、機械オンチなためだったのか。確かに、最初から理解できるような代物ではない。パソコンの増設くらいはするが、上っ面の知識で組み立てていることは、百も承知だ。
キーボードのせいかもしれない、と思ってもみた。キーボードを見てめまいを感じる人だっているはず。キーボードの配列は元々、日本語のために組まれたものではない、とどこかで読んだことがある。
しかし、それでは慣れれば解決か。それ以前の問題があるとみた。言語の壁だ。パソコン用語のほとんどが、英語をカタカナにしただけということは、英語版と日本語版の操作環境を使い比べてみるまでもない。
パソコンを立ち上げてみる。すると、どのソフトウェアを使っても、「ファイル」、「プレビュー」、「プロパティ」、「ツールバー」、「エンコード」、「ハイパーリンク」、はたまた、「フォルダー」「ディレクトリ」など、カタカナのオンパレードだ。ヘルプでキーワードを入力すると、出てくる、出てくる。カタカナで埋め尽くされている。
以前、日本語版と英語版のマイクロソフト・ワードを同時に使ってびっくりした。英語版には、使い方が分からない人のために、answer wizardというお助け機能がある。これは、英語を母国語とする人なら、「お答え魔術師」くらいの意味で、そんなに違和感がない。ところが、ワードの日本語版には、同じ機能がカタカナで「アンサーウィザード」と書いてある。どれほどの人が「アンサーウィザード」と聞いて理解できるのだろうか。
また、(F)、(E)、(V)、(O)、(C)、(S)、(P)は、それぞれ、ファイル(File)、編集(Edit)、表示(View)、開く(Open)、閉じる(Close)、保存(Save)、印刷(Print)の略だが、こんな基本操作でも、英語を知っているのと知らないのとでは、随分理解の仕方が違うであろう。(ちなみにAltキーと同時にこれらの頭文字をタイプすれば、マウスなしで素早く操作できる。)
つまり、パソコンを初めて使う日本人は、その操作の仕方だけでなく、用語の意味まで学ばないと扱いきれないということだ。言語の壁が、パソコン操作を二重に難しくしてしまっている。
確かに、英語が出来なくても、パソコンに通じている人はいる。意味不明な言葉を扱えるようになることで、優越感を感じる人もいるだろう。それは、それでいい。ただ、「何のためにパソコンを使うのか」と自問すれば、私自身にとっては遠回りに思えるのだ。


0 Comments:
Post a Comment
<< Home